| 逃げてほしいと思った。 俺が変わってしまう前に…。 シーツが柔らかく波を描いた。 「花月……」 優しい音を込めて名前を呼ぶ。 「ん…」 くるりと寝返りをうった花月の喉元は相変わらず白かった。 まだ、俺はお前を見守っていたい。 それでも…。 もう辺かの瞬間は始まっていた。 誰に求められない。 その白い肌に爪を突き刺す欲望が渦巻く。 お前を完全に支配する為に。 いっそ、逃げ出してくれればイイと思う。 けれど…もう、変化の瞬間は訪れてしまったから。 こうして、隣で寝ているのはなんの戯れか。 いっそ拒絶してくれればよかった。 拒絶すると思い込んでいた行為。 けれど、他の者のことに関しては気を使い過ぎくらい気を使うのに、 花月は自分のことに関してはかなりリベラルだったらしい。 あっさり帰ってきた可のいらえ。 そんな状況にならざるを得なかった花月をみていると、蛮はちょっと悲しかった。 けれど、それを示唆した本人ではあったので、断わりはしなかったが。 十兵衛がこのお姫様を守ろうとしているのもわからないでもない。 こんなにもろいのだ。 人はそれを強いというのかもしれない。 けれど、それはもろさの裏返しでもあった。 身体を許しても心は許さない。 そんな高潔を守ってやりたかった。 けれど…… もう変化の時は来てしまったのだから。 完全に支配する為の、欲望。 欲望 ヨクボウ よ く ぼ う 心を…ください 「花月…」 優しい声音。 けれどそれは凶器。 高潔を崩すそれはキーワード。 白いその喉元。 美しく、赤い血が通うその肌に蛮は顔を埋めた。 首筋にかかった蛮の吐息に花月は軽く身じろぎをした。 寝返りをうって右を向いていた花月の身体を少し回転させ上に被いかぶさる。 「ん…や、重い…」 下からかかる講議の声をしごく当然のように無視しその白い肢体をかき抱いた。 「ちょっと…まっ、あ…やっ」 さすがに起きたその瞬間にこの状態であったのは驚いたらしい。 止めようと暴れ始めたはいいものの、蛮に敏感な胸の紅点を攻められて くっと身体から力が抜けてしまった。 心を…ください それは言葉にしてはいけない。 だから…愛撫に込めるこの…よくぼう。 「は…んんっ…ん」 蛮の唇が 敏感な場所を辿る。 昨日の夜見つけた身体に散るその点。 そこを掘り起こすように丹念に愛撫する。 手のひらは脇腹を辿り花月の内腿までの侵入を果たしていた。 寝起きでわけのわからないままの愛撫は花月をますます素直に反応させる。 「やっ…ぁあん、ああっ…あ…」 優しく中心を掌に包まれると大きく肩を震わせて送られる快感に喘いだ。 「花月…」 蛮の声は花月の名しかよばない。 すべてを欲しているから。 だから名前にすべてを込める。 「やっ…もっ、あ、いやぁっ」 甲高い声は花月が果てた声。 思いを伝える為の行為だから。 無理強いはさせたくなかった。 優しく慣らしてやる。 その間も花月は蛮の与える愛撫に狂おしいほどの嬌声をあげるけれど、 その声の中に蛮の名を呼ぶ声は聞こえない。 それが胸を締め付けて、蛮は快楽でそれを消すように花月の中に分け入った。 「ひぁんっ…あ、ふ…ぁ…ああっ」 熱く柔らかく絡み付いてくるその感覚は心をもらったような感覚を錯覚させる。 一つになる瞬間の至福。 それがあたかも支配の瞬間に感じる。 心を…ください 「はっ…やっ、だめっ…もぅっ」 激しい律動に揺られながら花月が悲鳴のように限界を訴える。 快楽が背筋をせわしなく走るその感覚に花月は大きくせを反らした。 結合部から聞こえるその湿った音がいつも花月に罪悪感を与える。 けれど今日は何故か何も感じなかった。 素直に快楽に身を任せられる。 「あっ…いやっ、いやっ、やっ…ぁあああっ」 奥深く叩き込まれて体内で蛮の熱を感じ、花月は悲鳴を上げた。 それは熱くて、まるで恋人同士のよう。 偽りの恋人同士 心を…ください それが蛮の憶い。 花月は心を許さない。 変化の時は来てしまった。 心を支配するまで抱き続ければいい。 「や…も、無理っ…あ、あぁんっ」 抱き続けて心も抱き締めてしまいたい。 心を…ください |
| BB*2様のサイトでキリバンを踏んづけた時に頂いた蛮×花です。 かなり早めに頂いていたのに、載せるのが遅れてしまいました(しかも前のデータが壊れたPCに…(ToT) BB*2さんの書かれる文章は、独特の世界観があって良いな〜と思います(^^) 切ないけど素敵な蛮花を下さってどうもありがとうございました!! |