キャノン鈴木


「お前が抜けたから、今回の戦いは少々骨が折れたぞ。・・・次までにはちゃんと

 治しておけ。」


 

− 俺にとっては“最後”だったのに −

 

「十兵衛ったらちょっと冷たいわよ?−俊樹君、病み上がりなんだから無理しちゃ

 だめよ。」

 

− 無理してでも・・・それでも戦るつもりだった・・・ −

 

闇の感情が熾るのが、はっきりと自覚できた。

 

 

 

−だめだよ、こんな状態の君を戦いに参加させるなんて・・−

−平気だ。−

−無限城での病気を甘くみちゃ駄目だよ。免疫の乱れがすぐに死に繋がるような

 所なんだから。−

−俺の力が必要だろ・・?−

−俊樹・・・そうだけど、でも−

−だったら戦らせろ。−

 

そんなやりとりが小一時間も続いた後、結局は花月が折れて、自分は戦いに

参加出来ることになった。−ハズだった。

姑息とも言える手段で薬を盛られ、眠りこけて、目が覚めた時には既に

カタがついていたのだ。

花月にとっては、純粋に仲間を心配して、良かれと思ってした事なのだろう。

それは充分理解っていたが、今回ばかりは事情が違った。

 

 

「俺は・・もうここを出て行くんだ・・・花月・・・」

二人が出て行った、がらんとした自室で思わず呟く。

 

チリン。

ドアの向こうから耳慣れた音が聞こえてくる。

音はだんだんと近づいてきて、ドアの前で止まった。

 

「俊樹・・・いる?」

 

その声音には、どこかおずおずとした感があって、俊樹の胸の内に渦巻いていた

なにかが、それによって急速に拡がっていく。

− 今、花月に会ってはいけない −

一旦花月の顔を見てしまえば、この高ぶった感情を抑えきれなくなるような

気がした。どんな形にしろ、花月を傷つけてしまいそうな気がした。

 

返事をしないでいると、気配を察しているのだろう、花月はドア越しに

俊樹に向かって喋りだした。

 

「あの・・・今回の事、ごめんね。」

「・・・・・」

「君が無理して怪我でもしたらって思うと、・・・怖くて・・・」

 

どくん。と鼓動が跳ね上がった。シーツに置いた手に、自然と力がこもる。

 

「君の腕は充分認めてるけど、それでも僕は・・・」

「花月」

「・・え?」

「入れ」

「・・・でも・・」

「いいから入れ!」

半ば怒鳴るように言い放つ。一瞬の沈黙の後、ドアが開いて、

少し気後れしたように花月が入ってくる。

いつもなら真直ぐに見つめてくる瞳が、今日は伏せられていた。

 

 

 

 

 

長い沈黙が続いた。

俊樹は花月を側に呼び寄せて、立たせていたが、一言も喋らなかった。

いたたまれなくなった花月の手が、無意識のうちに髪を触って、鈴の音だけが

色のない部屋のなかで儚げに鳴っていた。

 

沈黙を破ったのは花月の方だった。

「あの・・」

「なんだ」

「俊樹・・・怒ってる?」

「・・・ああ。」

乱暴に返すと、肩をすくめて悲しげに眉を寄せる。

また、鼓動が速くなった気がした。

そんな俊樹に気づく様子も無く、花月は手に持っていたビニール袋から

薬のビンを取り出してサイドテーブルにことりと置いた。

「これ、飲んで。・・普通の薬だから。」

「どうだかな。」

「俊樹」

「また睡眠薬か?」

ビンを手にとってラベルをはがし、しげしげと眺めてから、花月の足元に

はらり、と落とす。

「とんだリーダーだな。」

「なっ・・・」

挑発的な物言いをする俊樹に、花月は動揺した。毒のある言葉に目がくらむ。

「・・お前も飲めよ。」

そう言うと、俊樹はビンを振って錠剤を出し、花月の目の前に突きつけた。

花月は俊樹の顔と錠剤を交互に見て、それから決意したようにそれを受け

取った。

「僕が飲んだら、君も飲むんだね?」

「さあな」

「約束して。」

「・・・分かったよ」

返事を聞いて、少し安心したように表情を緩めた花月は、台所に水を

汲みに行き、俊樹の分のコップも用意して戻ってきた。

 

「じゃあ、飲むよ。」

「ああ」

こくり。と水を口に含む。

薄い唇が濡れて、妙に艶めいている。

花月はそのまま薬を飲むと、俊樹に薬とコップを渡した。

「俊樹・・・」

「分かってる。」

俊樹が水と薬を口に含むと、花月は安堵の溜息をつく。

− しかし次の瞬間、それは俊樹の唇によって塞がれ、押し戻された。

 

「んっ・・・!?」

驚いて、抵抗する細い身体を更に引き寄せ、唇を合わせたままで花月を

深くベッドに沈めてしまう。

「っ・・とし・・ッ」

それを甘い、と感じたのは最初だけで、直ぐに溶け出した薬の苦味が

広がった。それでもかまわず、俊樹はその敏感な口腔と薄い舌を思うさま

貪った。

「・・・ふっ・・、んんぅ・・」

与えられる濃厚な口づけに、花月は鼓動を乱し、鼻にかかったような

どこか甘いうめきをあげる。

舌をきつく吸い、制するように上がった両の手首を捕え、乱暴にシーツに縫いとめた。

 

 

 

 

 

「やあっ・・・!やめ・・・俊樹!」

花月の服を裂いて後ろ手に縛り上げてしまうと、後は楽だった。

鈴を取って部屋の隅に投げ、髪を解く。白い肌が薄暗い室内でひときわ美しく見え、

思わず喉を鳴らす。鈴を持たない花月の身体は、驚くほど華奢で、儚い線をしていた。

「あ・・んっ!」

胸の突起を甘噛みすると、びくり、と身体を震わせる。

「俺をハメた報復は受けてもらうぞ・・・」

「どうして・・・俊樹・・・ごめんなさ・・あ、はあっ・・」

腰のあたりに目を落とすと、「右腕」と呼ばれている男がつけたのであろう跡があった。

やはり、という思いと共に嫉妬めいた感情が熾って、そこをきつく吸うと、花月は殆ど

悲鳴のような声をあげて身悶えた。

 

「あっ・・・」

いきなり身体を返され、乱暴に腰を抱え上げられて、両手を後ろに拘束されたままの花月は、

シーツに押し付けられた肩で身体を支えるはめになる。

「!」

俊樹の両手が無造作に双丘を割り、舐めるような視線がそこを這い回った。

花月は羞恥のあまりにひくり、と喉を震わせ、肌をうっすらと上気させてその視線に耐える。

「俊樹・・・お願いだからやめ・・っ・・」

内股にそっと手を滑らせると、たまらないように下肢をこわばらせ、潤んだ瞳で哀願する。

拒絶の言葉とは裏腹に、花月のそれは既に反応していて、先端から蜜を滴らせていた。

「いや・・・んっ・・はああっ!」

触れるか触れないかの手つきでそれを撫で上げ、もっと触れて欲しそうに内股を震わせているのを

無視して、硬く尖った乳首を優しく弄ぶ。

「あ・・・あ・・とし・・き」

「なんだ、もっと欲しいのか?」

「違・・・っ」

「じゃあ止めるか。」

意地悪くそう言うと、花月は目を見開いて俊樹を見上げた。

「あ・・」

目があうと、快楽に溺れかけていた自分を恥じるようにうつむく。しかし、既に熱くなった

身体は、理性を無視して新たな愛撫を求めていた。

「どうしたいんだ?」

「・・・助けて・・・」

この熱を、なんとかしてくれと訴える。

俊樹は口の端を僅かに持ち上げて、再び花月を鳴かせにかかった。

 

「あ、ああぁん!」

さんざん焦らされて、わけが分からなくなった頃になって、ようやく

灼けるような熱をもったそこにようやく指を与えられ、花月は喉を仰け反らせて喘ぐ。

俊樹の無骨な長い指がゆっくりと侵入してきて、中を探るように動かされると、

身体の奥底がひくひくと淫らに蠢いた。

「あ・・・っ、やあ・・、」

身体は快感を求めて暴走していて、与えられる刺激を逃すまいと貪欲に感じとる。

俊樹が指を前後に動かすたびに、耳を塞ぎたくなるような淫猥な音があたりに響いた。

「ひ・・・っ、うう・・・っ、」

二本に増やされ、悶える媚肉をかき回すようにして愛撫され、花月は開かされた脚の

つま先をぶるぶると震わせる。

「アッ、い・・悦いっ・・!」

ぎりぎりまで高まっていた身体が絶頂を極めようとする寸前に、体内をかき回していた指が

ずるりと引き抜かれた。

「――っ!?」

急激な喪失感に惑乱せんばかりになって、花月は涙に濡れた瞳を見開く。

「慌てるな・・今悦くしてやるから・・」

そう言うと俊樹は花月の潤ったそこに己の欲望をつきつけた。

「んああぁっっ・・・!!」

「くっ・・・!」

狭いそこに全てをおさめると、花月の四肢が激しい快楽に打ち震える。

緩く、突き上げると、それだけで嬌声を放って咽び泣いた。

「ふぁ、あ、あっ・・・」

身体の力が抜けて、そのままズルズルとシーツへ沈みこんでいきそうになるのを、

ぐい、と腰を捕らえられ、今度は小刻みな激しい動きで責められた。

「ひうぅ・・・!」

濃密な快感に、思考が白く濁る。

いつもとは違う愛撫を受け、違う人に喘がされている、そんな事実も少しずつ遠のいていく。

「花月・・・」

掠れたような声が耳元に響く。

花月はもう、ただ肉体の衝動の赴くままに彼を締め上げ、自分から腰をくねらせて快感を

得ようとしていた。

「ああ・・っ、お願い・・もっと・・・っ!」

次の瞬間、深く突き上げられ、花月は肉の悲鳴を上げる。

細い腰を掴まれ、大きな動きで責められると、繋がった部分から蕩けていってしまいそうな

感じさえ覚えて、濡れた秘肉がびくびくと震えた。

「あ、あうっ、はぁああっ!」

泣き濡れた花月の貌が淫らに歪む。

「もっ・・、だめぇっ・・!」

すすり泣く花月の朱に染まった身体が、俊樹に限界が近いことを知らせる。

「・・・いいぜ・・・」

ギリギリまで引き抜き、突然強く、深く、花月の内部を抉る。

「ひああぁぁあ!!」

泣き所を正確に貫かれ、息が止まりそうなくらい凄まじい快楽の波が花月の全身を襲い、

耐え切れずに高い悲鳴を上げる、何度も昇りつめ、正気さえ失うような激しい快楽に

揺さぶられた。

 

「花月・・・」

「あ・・っ・・何・・?」

「俺は・・・」

 

 

 

− 俺はココから消える |

 

 

 

 

 

自分の隣で眠る花月の顔をじっと見つめるB

それはあまりに美しくて、こうしているとむしろ冷たい印象を与えるくらいだ、と思うB

実際、「風雅」の弦の花月は沈着冷静で、冷酷だと言われているB

しかし花月は仲間を失いたくない、といって不利になることを承知で戦い

参加させないような、そんな一面もあるのだB

そしてあの媚態B

扇情的で淫猥なその様子は、いつもの花月からはかけ離れてい

花月を深く知る程に、不安になる。

 

「もっと・・・ずっと守ってやりたいんだがな・・・v

自分はここを去るB

それでも花月の周りには十兵衛や雷帝が居る。問題はないだろうB

 

俊樹は机の引き出しからプラスチックのケースを取り出すと、中のカプセル

口に含み、口移しで花月に与えた。

「ん・・・v

小さく、喘ぐB

飲み下したのを確認して、息をつくB

そして、花月を残して部屋を後にしたB

 

 

− 強い薬だか3日分の記憶はあやふやになるぞ −

無限城の怪しい薬屋の言葉を思い出すB

目が覚めて自分が消えたと知ったら、花月は悲しむだろうかB

そんなことを考えながらA

俊樹は雑踏の中を無限城の外へと進んで行ったB

 

 

 

                                       終B



*実は結構前に頂いていた俊樹×花月です(^^;)
PCが壊れていた事もあって中々外に出せなかった小説です〜(すみません
j とても素晴らしい小説を下さってありがとうございますm(__)m






次回のルシ花も期待して良いですか…(^^;)