Spiritual enlighten ― 覚醒 ―
キャノン鈴木
我らに罪をおかす者を我らが赦すがごとく
我らの罪をも赦したまえ
「一雨来そうだな・・・」 「ひっ・・・ぅあ・・」 雨流はこの男に羨望と憧憬の凝った憎しみを抱いている。 そんな歪んだ感情を持つのも、―― 無理もないことだ。と。 技においても精神においても、その見た目からは予測できない程に強い。 そのことが雨流の闇を増やしたのは事実だろう。 この、美しく気高いものを享楽の渦に巻き込むことで雨流が救われるというのなら、 それは酷く可笑しなことのように思えた。 決して自我を手放そうとしない駕籠の鳥に問いかけてみる。 「オルフェウス・・・君は実に強情だ。君のその気高さが、今、何の役に立っているというのかね?」 返事はない。 代わりにさも厭そうに、顔をそむけられた。 ずっと、かれはそうしている。逃げることが叶わないと理解したときから。組み敷かれて無理矢理に 雄を受け入れさせられた時から。ずっと、唇を噛んで、目を閉じることでルシファーを拒絶しているのだ。 「・・・君はあくまで赦しを請おうとはしないのだね・・・とても、良いことだ。 私は強い物が好きだよ・・・」 再び、それを受ける者にとって最も辛いように、腰を動かす。 「っく・・・」 「だが、そろそろ君を我々の為に尽くす“弦術師”にしなければいけないね・・私達には時間が無い。」 そう言ってルシファーは己を花月の蕾からゆっくりと引き抜いた。 「ぅ・・・」 全て抜き取ってしまうと、上げさせられていた腰はずるずるとくずおれていく。 それを横目で見ながら、部屋の隅に置かれた祈祷台に手を伸ばす。 その祈祷台には小さな引出しがついており、そこに聖書などを入れられるようになっている。 ルシファーは引き出しを開けると、中から乳香を入れるガラス瓶と、ロザリオを取り出した。 荒い息を吐いている花月は、かちゃかちゃ鳴る音に不吉なものを感じたのか、僅かに肩を強張らせた。 男が瓶の蓋を外して中の透明な液体を少しばかり手に取った。と、その液体は乳白色へと色を変えた。 「・・・これは温度が高い部分に使う程効果が出るものらしいが・・・ 君のココに、使ったらどうなるだろうね・・?」 「やっ!嫌・・・っ」 すべらかな双丘に手をかけられて、花月は下肢を捩らせて逃れようとするが、詮無きこと。 直ぐに捕えられ、そこを割られる。 「やめろっ・・!・・・・ぁ・・」 気丈にも言い放つが、硬い指先が花月のたった今まで雄を呑み込まされていた部分に触れると、 ぴくんと反応を返す。 「ああ、まだ柔らかい。これなら直ぐに効きそうだ・・」 「んっ・・・ぅ・・」 くちゅり、と音を立てて指が埋め込まれ、媚薬をすりこむように何度もそこをなぞる。 屈辱に青ざめた顔と、欲しがっているかのような従順さで指を咥えこんでいる蕾の痴態がこの上なく愉快で。 ルシファーはきちがいじみた感情が己の裡を満たすのを感じた。 それを冷たい、と感じたのは最初だけで、直ぐにそこがじくじくと痛いくらいに熱くなってくる。 きつく目を閉じても、男が指を動かすたびに、聞きたくも無い淫らな音が耳に入ってきた。 「ひっ・・・」 男は、敏感な蕾を薬ですっかり濡らしてから、指をそこから抜き取った。 途端に、蕾は主の意思など無視して物欲しげな収縮を見せる。 「い、いやぁ・・・あ ―― ・・」 「どうかね?」 悠然と問いかけるも、花月の方は既に余裕が無いのか、はあはあと苦しそうに息を吐いて、 自分を翻弄する媚薬の力に必死に抗おうとしていた。 「・・・質問に答えたらどうだ?」 「あっ!」 紅く充血しているそこに、乱暴に指を突き立てる。 「オルフェウス・・・言ってごらん。」 「ふ・・う・・ぁ・熱い・・・っ、あぁっ・・・」 耐え切れないといった風情で淫らに腰を蠢かす。 先ほどまで青白かった頬も紅潮して、花月の受ける快楽の激しさを如実に物語っていた。 「ふっ・・では、冷たいものが欲しいだろう・・?」 「ぇ・・・?」 嘲るような声音。手首を戒められたままでいるせいで痛む上半身を無理に動かしてルシファーの方へと 向けると、男の手にきらきら光るガラス珠がいくつも連なった、紐状のものが握られているのが見えた。 「ロザリオ・・・と言うんだが。知っているかね? 珠を一つずつ指で送りなが成分祈祷を繰り返すためにあるんだ。」 「・・・―― っ!」 瞬間的に男の意図するところを悟った花月は、咄嗟に寝台の隅に後ずさったが、 腰から下が痺れたようになって、思うように動かない。そこにルシファーの腕が伸びてきて、 足首をつかみ取られた。 「 ―― や・・」 ルシファーが低い、唸るような声を上げた。 「このような屈辱は耐えられないかね・・・?“弦の花月”君。」 足首をつかまれたままシーツの上を引きずられた花月は、 背後から伸し掛かってきたルシファーによって勃ち上がった部分を握りとられ、身動きできなくされていた。 じゃらりと鳴る球をひくつく蕾にあてがいながら、 「君の、かつての部下が、これを望んだんだよ・・・」 と、こともなげに言った。 「な・・・」 「君を穢して、辱めて、貶めることを、彼は切望していた。」 「う・・・嘘だっ・・・」 震える声での強い拒絶。しかしその目には今にも崩れ落ちそうなほどに戸惑った色を宿す。 力が抜けたところに、一つ目の球をぐい、と押し込んだ。 「あっ」 花月が狼狽した声をあげたところに、更に二つ目。 「いや、や!ああっ!!」 「・・・・さっきまで私のものを加えていたんだ・・・このくらいわけもないだろう?」 そう言いながら、乳白色の液体の助けを借りて、一粒、また一粒と押し込んでいく。 震えの止まらない身体を抱きしめ、涙のつたい落ちる頬をやさしくぬぐって、 男は眼前の美しいものが、確実に落ちていくのを感じとっていた。 |
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