ガラガラと崩落していく建物と、燃え盛る炎から追われる様に逃げる。 遠くに沢山の声が響いて、父も母も、その中にいた。 「こっちだっ!花月!」 「十兵衛!!」 そのまま闇雲に走って、無限城を目指した。 互いに着のみ着のままで、只炎から逃げ出した。 そうしてそれ以来、穏やかな光が降ることは無くなった。 無限城に夜が訪れる度に、花月はその数を数える。 必要最低限しか置いていない空間、部屋とも呼べないそこの寝具の上で 外の世界をぼんやり眺めて指折り数えた。 「花月」 その傍らで、十兵衛は声を掛けた。 「なに?」 振り向いて薄く微笑う。 「いつまでそうしている気だ?」 「あ・ごめん」 そういって窓を閉めて、上から十兵衛を覗き込んだ 「寒かったの?」 「いや、お前が体調を崩すと思ったから」 読みかけの本を閉じて応える。 「またぁ、どうして十兵衛はカホゴなのかなぁ・・・」 そう言うと、花月は拗ねて十兵衛をぽかぽかと叩く真似をする。 まだ無限城に来てからの日は浅く、限られた空間で2人は寄り添うようにしていた。 「また、夜が来るね・・・」 ぼんやりと花月が呟く。 あの日から、どれ位経過したのだろう。 「怖いのか?」 互いしか頼れる存在が無くなってから、花月は言葉すら儚くなってしまった。 「・・・うん。」 「どうしてだ?」 くすくすと笑ってばかりだった花月が弱音を吐く。 十兵衛は花月の傍へと上がり、肩を支える。 「夜は暗いから、何もかも呑み込んじゃうんじゃないかって・・・。」 きゅっと十兵衛の衣服を掴んだ花月の手が、微かに震えている。 「十兵衛・・・いなくならないよね・・・」 「え?」 「父上や母上みたく・・・死なない、よね・・・?」 弱々しく声を出す。 立場が同じなのは十兵衛も一緒なのに、縋りつきたくてしょうがない。 「十兵衛までいなくなったら、僕・・・」 服を掴むだけの手が、次第に首に抱き付いていく。 その花月の行動に、十兵衛は背中を軽く叩いて落ちつかせようとする。 「そんなことはありえない。俺はお前を守る為にいるんだから。」 ゆるりと抱き締めて、ゆっくりと撫で下ろす。 「やだよぉ・・・」 後から後から零れてくる涙を堪える事も無く、十兵衛に縋りついて嗚咽を洩らしていく。 「花月、泣くな」 名を呼んでも、顔を上げようとはしない。 「花月っ!」 涙を止めることが出来ない自分に対してか、十兵衛は声を荒げてしまう。 一瞬顔を上げた花月に、半ば無理矢理口付ける。 秒にも満たない、触れるだけの口付け。 「じゅう・・・べえ・・・?」 「花月を残して消えるなんて、そんなこと俺はしない」 花月の身体を強く抱いて、必死に言い聞かせる。 「だけど・・・」 涙は隠れたものの、花月は十兵衛の行動に只々驚いていた。 まだ何か言おうとした花月に対して、十兵衛が手を止めることは無かった。 「ん・・・っ、ふ・・・」 十兵衛がキスを施していく度に、その熱に花月の身体が侵食されていく。 「や、ぁ・・・」 軽い刺激から段々と深みを増していき、宝物を扱うかのように指も花月の肢体をなぞっていく。 「ぁっ、」 紅い飾りを指が掠めたとき、花月はびくりと身体を強張らせた。 乱れた衣服を手繰り寄せ、その色づき始めた身体を隠そうとする。 「や、じゅう・・・べえ・・・やめっ・・・」 「やめていいのか?」 必死になって手を止めようとするも、花月の身体はとうに熱を持ってしまっている。 花月がぐっと返答に困っている隙に、沢山の跡をわざとゆっくりと付けていく。 「ぅ・・・じゅうべ・・・のいじ・・・わる・・・」 身体に集まる刺激が花月に選択肢を与えるわけも無く、その熱に身を任せる事にした。 「ぁ・・・んっ、あぁっ・・・」 熱が高くなっていくたびに、花月は何も考えられなくなっていった。 相手が他の誰でもない十兵衛だからこそ、自分の姿を偽らずに曝け出せる。 この瞳に映る人のことだけを、ただ理性の狭間で想うだけ。 「やっ・・・!」 十兵衛の指が中に触れてきた瞬間に、花月は想わず声を上げてしまった。 「大丈夫だ・・・濡らしてあるから・・・」 耳元で囁いて、花月自身にも悪戯をしかけて、ゆっくりと侵入させていく。 花月はしがみついて、甘い声を上げていく。 互いの目を合図に、十兵衛は花月の中に入っていった。 「んんっ…!!」 指ではない熱を持ったそれに、花月は例え様も無い程の波に襲われた。 「あ・・・ん、はぁ・・・あぁっ・・・」 声を抑えることも無く、ただ与えられる刺激に十兵衛の方に腕を回すことで耐えていく。 かづき、と呼ばれたのが最後で、そこからは熱に負けて白い靄が掛かっていた。 花月が次に目を覚ましたのは、すっかり陽も高くなった頃だった。 何も着ていない身体には、しっかりと紅い跡が縁取られていた。 「(あ・・・昨日の・・・)」 思い出すだけで、どうしようもなく恥ずかしくなってしまう。 隣で寝ている十兵衛の肩には、自分が付けた爪の跡が残っている。 「(たくさん引っ掻いちゃったなぁ・・・どうしよう。 謝ったほうが・・・いいよね・・・)」 取り敢えず簡単にくしゃくしゃになった衣服を羽織って、十兵衛の顔を覗きこんだ。 謝るのは引っ掻いたことと、弱音を言った事。 体に残っている跡は、消えても記憶としては残しておきたい。 十兵衛は僕を守ると言ってくれているけど、守られるだけはやだよ。 強くなるから、だから傍にいてね。 |
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東たつきさんからの頂き物小説で こちらからのリクは「お子様十花」です。 もう、花月ちゃんが可愛くて可愛くて、 かなりメロメロ(笑) たつきさん、どうもありがとうです♪ お返しにお子様… …何か、他で差上げた絵とイメージが 被っちゃってる(泣) 色まで似てる〜!!!(大泣) ごめんなさい〜! 出直して来ます… ![]() |