『狩人の戯』
東 たつき




ゆらめいていたものが身体に還ってきて、花月はぼんやりと瞳を開けた。
意識が今一つ明確では無いが、自分のいる場所が暗い屋内だという事だけが分かった。
直ぐに起き上がろうとしたが上手くいかず、自分の両手が後ろ手で縛られていたことに気が付いた。
「(此処は…、一体誰がっ…!)」
何とか解こうとしても、きつく結ばれていて無駄だった。
「目覚めたみてーだな、オヒメサマ」
部屋の隅から声が聴こえた。
「其処にいるのは誰だ!」
自分を嘲笑う声の方向に威嚇を放つ、だがその声の主はライターの小炎と共に現れた。

「…美堂蛮…君ですか、こんなことをしたのは?」
「オレじゃなかったら誰がやったんだ?」
直ぐ傍まできて見せるその表情は、罪悪感などは持ち合せて無くて、花月は心の奥底で冷たい水が滴ったような感覚に襲われた。
「何故、こんな真似を…」
「何故だと?」
「だってそうでしょう。僕は君に対して恨みを持たれるような事はしていない筈です。」
蛮の気迫に押されず、自分のペースを保って、花月はきっぱりと言い放つ。 
「そのチョーシだと気付いてねみてぇだな、カヅっちゃんよぉ…」
不敵な笑みが毀れる。 その言動ですら花月の中で寒気が走り抜けた。
「え…、なにを!」
グッと胸元を掴まれたかと思うと、微かに衣服が破れた音がした。
「ココにオレが付けたキスマークがあること、知ってたか?」
「なっ……!!」
そのほんの微かに残る赤に、羞恥心を煽るように首筋に指でなぞり上げる。
「あれから何日か経ってるってのに、まだ残ってるなんてなぁ・・・」
「っ、偽証なんて止めて下さい! 大体君にそんな事された記憶なんか無いです」
あくまでも花月は冷たく答える。隙を見せてはいけないと本能が訴えている。
「記憶なんか無ぇに決まってるだろ。」
「え?」
「アンタがあんまり喧しいから、貴重な邪眼使ってやったんだぜ」
「!!」
花月は蛮の言葉を聞いて思い出した。記憶が一部分だけ惨劇を見たことになっているのを。
自分にとって思い出したくも無い、過去の記憶。

「あん時は一分だけだったのに、随分イイ反応してくれたよな。 だからよ、ホンキで抱いてみたらどんな反応すっかなと思ったワケ」
ニヤリと笑う、あの阿久津邸での一件と同じ殺気が花月に向けられた。
部屋の片隅に、キラリと鈴が見えた。

「…っ、」
手が拘束されていて思うように動けない花月を組み敷いて、好きなようにしていく。
自分の姿を見ないように硬く閉ざされた瞼が、細い肢体が、降り注ぐ刺激を感受しては震えていく様が
そこらへんの女を相手にするより自分を煽らせていく。
「や、ぁ…」
「花月、…目ぇ開けろよ」
声が微かに漏れたのを見逃さず、わざと耳元で囁いて、指を、舌をゆるりと身体に持っていく。
何時だって凛としている瞳が閉ざされて、自分の好きに相手を翻弄させていくことに嗜虐性を募らせていく。
「やっぱイイ反応するよな…、もしかして慣れてねぇのか?」
「な、っやぁっ…」
反論させないで声を出させようと、蛮はその攻撃の手を緩めようとはしなかった。
「あっ!」
もう既にシャツは衣服の意味をしていなくて、露になった肌が花月の反応を意に反して色付いてきた。
「アンタみたいなヤツが無限城で生きてたんだ、一回くらい、あったんだろ・・・?」
逃げ場なんか最初から作らないで、限界の所まで追い詰める。
「や、ぃや…」
花月の身体は、容赦なく降って来る刺激に徐々に反応してった。
それでも必死に流されようとしない態度に、蛮は手をゆるゆると下に移した。
「…っ!…」
「もうヤベェことになってるゼ…」
その言葉に顔が昂揚してくる。身体の中で何かが疼き始めている。
止めてほしい筈なのに、身体は簡単に裏切っている。
下半身に集中している感触を、どうしても意識がそれを追っていってしまう。
「ぁ、ぃやぁっ…あぁっ…!」
無理やり露にされ、突然生暖かい所に連れ込まれた。
「んぁっ、やぁっ!…はなっ、してっ……んぁぁっ!」
花月の必死の制止も聞かずに、蛮は花月に執拗に纏わりつく。
頭部を退かそうとしても、力の差は歴然。 もとより花月から力は無くなっている。
はぁはぁと弱々しい息遣いが速くなり、限界が近くなってくる。
「んぁっ、ぁっ…やぁっ、んっ…ああぁっっ!!」
導かれるままに、花月は欲を吐き出してしまった。浅ましい自分に対して無意識に泪が溢れてくる。
「んだよ、もぅ限界か? 慣れてねぇんだなヒメサマは…」
ペロリ、と脇に飛散ったものを舐め取る。
花月はそのままぎゅっと瞳を閉ざした。達した後の脱力感と、諦めに近い感情が混在している。
「言っとくけどよ、これでオシマイって訳じゃねぇぜ……?」
抵抗はもう無いものと見做して、両手の拘束を解く。
耳元で薄く囁くと、蛮は花月の白いものが伝い残る細い脚を開かせた。
「やっ!…何をっ…!!」
聞かずとも、何をされるかなんて感じ取ってはいた。けれど認めたく無くて反射的に身体を強張らせる。
「言ったろ? オシマイじゃねぇって…」
そう言うと、蛮は乱暴に花月の中に押し込めた。
「やぁっ、いやぁぁっっっ……!!」
痛みと衝撃と嫌悪感が混ざり合って、それが花月を襲ってくる。
ぼろぼろと泪が零れ落ちる。蛮が花月の中で熱を孕んで暴れている。
「やぁ、ぁんっ…ひぁぁっ、んんっ!…あぅっ…」
花月の身体は先程熱を吐き出した為に、もう抵抗する力すら無かった。
意識が霞んで、でも自分の中の人がそれを無理に引き戻す。
「ぅぁあっ…ひぁ!…あぁっ…ぁんんっ……っっ!」
ビクビクと波打つ身体が悲鳴を泪と共に落とす。
その様ですら蛮に云われぬ感情を齎す。暴走したまま熱は未だ臨界点には達しない。

何時の間にか、花月は声を出すことも無くなり弛緩して意識を手放していた。
瞼を伏せられたその顔を飾るのは、幾つもの泪の後。
屈辱のまま抱いて、無理矢理突き通したことは、別に自分にとって汚点(マイナス)にはならない。
つまり戯(あそび)だと。

自分の中から何かが囁いた。

この獲物を如何してくれようか・・・?


東たつき様から頂いた「おまかせ蛮花」…
お任せしたら、とんでもなくすんばらしい物が帰ってきました(嬉)
無理やりしてします蛮ちゃん…(^^;)花月さん大変です〜
所で素朴な疑問…花月さんは…初めてだったのでしょうか?(爆)

東たつき様、ありがとうございました♪
しかも2回連続…(^^;)でも嬉しかったです〜